かたかご
「具合いは、あまりよくないので私が代わりに‥。」
高市皇子は、申し訳そうに返答すると、大友皇子は、笑みを浮かべ
「そうか、まぁ大事にされるように。
そうだ、なにか見舞いの品をおくらせましょう。我が妻の父でもある。大切な方でもあるからな。なぁ、十市」
妻を見つめた。
「ええ、そうですね」
十市皇子女は、大友皇子の言葉に同意する。
「ありがとうございます。父もよろこびます。」深々と頭を下げるのを見届けると大友皇子は、高市皇子の前を後にした。しかし、十市皇女はそのまま高市皇子の前に立ち尽くしていた。
「お変わりなさそうで、一ヶ月ぶりかしら」
十市皇女は、再会をうれしいそうなそぶりをみせた。
高市皇子は、頭を上げ十市皇女をみると
「はい、貴女様も‥」
ゆっくりと答えた。
「あの‥」
十市皇女が、言おうとした時だ。
「十市、はやくきなさい」
大友皇子が、十市皇女を呼び付けた。
十市皇女は、少し慌てた状態になった。
「はっ、はい。
高市、それでは」
十市皇女は軽く頭をさげると、高市皇子の前から立ち去った。
高市皇子は、黙って立ち尽くしていた。
御名部皇女は、時が止まったように、立ち尽くしている高市皇子を見つめていた。
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