かたかご
暗雲
天智の喪があけると、ついに大友皇子が即位した。
弘文天皇(こうぶんてんのう)が誕生した。
即位の礼も無事に終わり、公務も順調におこなわれていた。
あるひとつ気掛かりをのぞけばだが‥
しかしそれに誰も触れようとはしなかったが、古くから宮中に仕える一族の大臣が、口にした。
「大友様は甘すぎのではないのか?」
大臣の一人が、ささやくようにいうと
「たしかに、大海人皇子をほうっておくのは危険だ」
「その通り」
「妻である十市様の父上であるからといっても信用しすぎでは?」
他の三人の大臣たちも口々にいい始めた。
天智の生前には、大友皇子をささえると誓いをたてていたのだが、いざとなると、地方豪族の母をもつもの下に仕えてることに不満がでてきた。
大海人皇子を、不安な種を消し去りたいが、弘文は、何もしないでほっておくようにいうばかり、「やはり卑母の子は、考えが甘い」
「虎に羽根をつけて放つようなものではないか」と、臣人の中でいうものもでてきたために、噂話が耳にはいるたびに、大臣達はますます焦りと不安を感じ始めていた。

そんな頃、御名部皇女は十市皇女のもとにいた。「御名部様、讃良様(さらら※本名はうののさららのひめみこですが
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