かたかご
廊下を歩きながら、十市皇女を呼ぶ声が聞こえた。
十市皇女の顔に困惑に変わった。
「十市!」
叫ぶように、部屋に入ってきたのは、弘文天皇であった。
「十市ここに、おったのか。」
弘文天皇は、十市皇女の顔をみると安堵する様子は誰の目からみても明らかだ。
御名部皇女は、そんな様子に不安を感じた。
記憶をたどり亡き父上の姿を思い出す。
帝としての気品と圧力を感じたが、異母兄の天皇には父上から感じたものが何もない?
この方が今国の頂点に立つ方なのだろうか?
母上の不安はこのことをさすのだろうか?
御名部皇女の頭の中をめぐった。
「あなた、いかがなされました?」
十市皇女の言葉で我に返り、天皇をみつめなおした。
「そなたが、好きな花の苗が手に入ったぞ。」
うれしいそうに言う帝に十市皇女は、
「では、公務が終わりましたらご一緒に庭に埋めましょう。」
優しく落ち着かせるようにのべると、御名部皇女の方を見て
「そうだわ、御名部様もご一緒いたしませんか?」
その言葉に弘文天皇は、御名部皇女が部屋にいることに気付いた。
「御名部、いたのか」
「はい、帝。ご機嫌うるわしく」
御名部皇女は、軽く会釈をした。
「御名部も元気そうだな、
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