カナリア
「そういや文太君、第二外国語って何とってるの?」


「いきなりだね。」


「コミュニケーションだよ!」


「なるほど。スペイン語だけど。」


「へー。」


「発音がローマ字読みで簡単だし、うちの大学じゃマイナーだから、単位とりやすいの。」


「へー…。」


「確かに大学で学ぶ外国語なんてしれてるけど、学ぶからに身になるものほしいよね。

スペイン語分かるとイタリア語もだいたい分かるようになるし、ラテン系の応用理解できるし。

つっても、まあ、まずは勉強だけど。理解は簡単なんだけど発音ってなると、おれ全然ダメだしさあ。」


「アハハ、そうだよね。まずは勉強だよね。」


「で、この話題に何か発展性あった?」



「どんなに発展性がなくても不毛でも些細な事でも、最初は必要な事だと思います。」


強気で答えると、文太君が腹を抱えて笑った。


「く……アハハ。
フフ…くっだんねー会話。」


「ちょっと文太君!感じ悪すぎ!」


「アハハ、ごめんごめん。からかってるワケじゃないんだよ。気分害したならゴメンゴメン。」


そう言われてもからかわれているようにしか感じない。ちょっと、笑いすぎ!



「おれ、あんたとは、もっと違う話をするもんだと思ってたから。」


「違う、話?」


「本当に友達からスタートするんだなって思って。そうだよな、あんたって、普通の女子大生だもんな。」


頭の上にクエスチョンマークを浮かべる私をよそに、彼は話し続ける。


「うん。まあ、思った以上に肩の力抜いて行こうかなって。」


「文太君?」


「ごめん。こっちの話。さっきの続きしようか。

えっと、じゃあ、あんたは第二外国語、何をとってるの?」


なんだか釈然としない。文太君は何が言いたいんだろうか。


「いいんだよ。テキトーに流されておけば。」


そう言われた。考えても仕方がないような気がした。

まあ、いっか。


「私はドイツ語だよ。」


「ドイツが心理学の発祥の地だから?」


「アハハ。別にドイツ語の文献を読まなくても今は英語文献がたくさんあるし。

それに大学で一年学ぶだけの外国語なんてたかがしれてるし。響きかな。」


「確かに、ドイツ語カッコイイよね。

クーゲルシュライバー。」


「ボールペン。

文太君と学部でもかぶってれば、何か教えてもらるかなって思ったんだけど、ないよね。心理学って言っても、そっちって教育心理学だもんねー。」


「ねー。

いいよ、別に。あんたは適当に、おれの話し相手になってくれるだけで。

友達ってさ、何かしないといけない、って関係じゃないでしょ。むしろ逆で、何もしなくていいから友達、なんだと思うよ。」


「そっか、そうだね。じゃあ、よろしくお願いします。」
< 14 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop