カナリア
「ねえ、文太君。結構な頻度で付き合ってもらってるけど、私、勉強の邪魔になってない?」


「なってるよ。」


「やっぱり、なってるんだ!」


私は今日も文太君と一緒に食堂で勉強していた。


「でも別にどうって事は無いから気にしないで。勉強だけが全てじゃないし。

おれは結構、あんたと喋ってるの、楽しいけどね。」


「えっ…」


楽しいと思ってもらえているのか、となんだか意外に感じた。


「ありがとう、嬉しいかも。」


「アハハハ!」

(あれ!何で笑われた?)


「こうやって、誰かと一緒に勉強するってやった事ないけど、今のところ嫌じゃないし。」


「そうなんだ。文太君、友達いないの?」


「あんたはどうしてそう直球で聞くわけ。」


「ご、ごめん。」


「あんたが居るじゃん。」


友達、いないんだろうか……
やっぱり直球で聞きすぎたかもしれない。


「まあ、作ろうと思っても、難しいんだけど……」


「ご、ごめん……」


「アハハ、同情してくれた?」


文太君は自嘲するような薄笑いを浮かべた。

話はそこで終わって、彼が気を遣ったのか話題を変えてくれた。


「そういや、みんなとはどう?ほぼ毎日会ってるよね。」


「そうだね、ちょっとだけど時間見つけて会いに行ってるよ。」


「へえー頑張るね。」


「一気に4人も友達が増えて楽しいよ。みんなジャンルばらばらだし。セイには美味しいお店教えてもらえるし、木場君とは映画館観に行ったなぁ。

あ、セイに教えてもらって見に行ったんだけどみてみて、岡目君のバイト姿。」


「うわ、写メとったの!?うわーー……うわーーーー……なんか変な感じ。」


「みた事ないの?」


「ないよ!興味ないし!う、うあー…にあわねー……。」


「そんな事ないよ、意外とカッコイイよ。」


「アハハ。岡目に言っておく。

ていうかおれ達にべったりでさ、大丈夫?」


「ん?何が?」


「……。…付き合ってる人いないの?」


「い、いません!なんでそんな話になるの!」


「あ。やっぱりいないんだ。」


「や、やっぱりって!」


「いや、普通に考えて、彼氏いたら、こんなベッタリ一緒にいるの難しいよね、って話。

大丈夫、顔はかわいいんだから安心して。」


何だろう、棒読み感。褒められたのに嬉しくない。


「……フーン。ね、カナ。」


「は、はい。」


文太君の声のトーンがちょっと変わった。


「デートしよう。」


「いきなりなんで!?」


「テストの結果がよかったから。はい、これフィールドの小テスト。」


「文太君の所って、答案用紙って返却されるんだー!へー……って、うわ満点だ!」


「暗記得意だから、楽勝楽勝。

ね、どう?どっか行かない?」


「ど、どこか…行く位なら……。」


「やったーデート!」


「デート……。」


「やだな、そんなに緊張しないでよ。」


「緊張は、してない、です!ビックリしてるだけです。」


「おかたい~~。若い内にしかできない事って沢山あると思うからさ。色々やっておいた方がいいって。カナ、顔はかわいいんだし。」


「文太君に言われると中身をすごく否定された気分になる!」


私がいじけると、彼はまた笑った。楽しそうだ。


「アハハ、男受けはしないだろうね。胸ないんだから、もっと儚げでお淑やかな感じが必要なんじゃない。」


「文太君!!!!!!」


「フフフ、怒った。」


「気にしてるのに!!!」


「いいじゃん、脚綺麗なんだから。で、何処行く?」


「こんな状態で行くと思ってるの?」


「思ってる。」


全く反省の様子が見られない文太君を軽くにらむ。


「ごめん、怒った?つい、楽しくて。

カナと、一緒に行きたいです。」


「ぐ……。」


今日一番の笑顔でにっこりと微笑まれると、怒る気がなくなってしまう。


な、何この攻撃……。確信犯だ。


「えっと……。デートって……。」


「映画は木場といってるよね。セイとはご飯いってるでしょ?

じゃあ、買い物かな。どう?冬服とか見に行ったりしないの?荷物、持つよ。」


「えっと、じゃあ……。」
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