カナリア
というわけで、私たちは遊園地にやってきた。


「デートの定番でしょ。」


「て、定番だね!」


「温泉とかでも良かったんだけど、泊まりは流石にねー。」


「う、温泉……嫌でもない……けど、知り合ってばかりの友達と一緒に行くにはハードル高すぎる。」


「あ、水族館でもよかったかな。」


「あ、いいね。」


「あんまり喋らなくていいし。」


「そこ!?」


「ま、いいや。遊園地楽しもう。」


文太君は手際よく整理券をゲットして、少ない待ち時間で攻略していく。


絶叫マシンやお化け屋敷等、苦手な物一つない私と文太君は手当たり次第乗ってはしゃいで楽しんだ。


絶叫マシンのゴール前で二人でポーズをとった。記念写真なんてバカップルみたいだ。二人でくだらない話をしながら、あちこちまわった。




「はああ……結構遊んだー……。」


「休憩しよ。どうする?何か食べる?つーか弁当とか持ってきてないよね。」


「も、持ってきてないよ!ご、ごめん……作ってきて……ほしかった?」


しまった。世の女子は遊園地デートにはお弁当を作ってくるものなのだろうか。全く考えていなかった。


「違う、逆。ほら、よくあるじゃん。お弁当作ってくる女。

弁当なんていつでも食えるんだからさー。わざわざ遊園地いくタイミングで用意する必要なくない?」


「うーん……バロメーターにしてる人が多いんじゃない?

お弁当って自分用だと全然手間じゃないんだけど、やっぱり人の事考えて作るってなると大変だからどんだけ頑張ってくれるか測ってる……とか。」


「お互い?」


「お互い。」


「ふーん。カナは弁当ではからない人でよかったよ。」


「作ってきてあげようか?」


「さっき大変って言ったじゃん。

いい。弁当持ってきたら色々気遣わなきゃいけないだろ。整理券とる為に走ったりできないじゃん。」


「そこなの!?

うーん……作ってくる作ってこないじゃなくて、相手の立場になって考えるのが大事かなぁ。
作って欲しくなったらいつでも言ってね。」


「あ、そうやって事前に聞いてくれるのはいいね。おれはソッチの方がいいな。」


「うん、冷凍食品沢山つめて気を遣わなくていいようにしてあげるね!」


「なにその気遣い。あと、遊園地のクソ高いおもしろ飯食べるのも、楽しいってセイが言ってたよ。」


「えっセイ!?文太君は?」


そう聞くと文太君は、興味ない、と言った。



「……他の同居人は?遊園地行ったりしないの?」


「全然駄目だよ。修学旅行以来行ってないんじゃない?」


「へー意外。セイとか好きそうなのにね。」


「ダメダメ。あいつら早く動く物だめらしい。飛行機でもギャーギャー言ってたし。

あ、今度岡目と行ってみてよ。絶対楽しいから。」


文太君は違う意味で楽しそうな笑みを浮かべている。


「あ、木場はアイスワールド好きって言ってた。」


「アイスワールド?またコアな……」


「ちょっと変なんだよ木場は。」


「今度はみんなと行ってみたいなぁ。」


「アハハ。」


文太君は、わざわざ高くてまずい食べ物はいらない、という事で飲み物だけで済ましていたが、私は高くてまずい、でも楽しい軽食はなかなか満足だった。

遊園地ならではというのだろうか。



ショーを見るために場所取りをする。


三十分くらい前でいいかと思っていたが本気の人は一時間二時間前に平気でいい席を取っているのでびっくりした。まだ三十分もあるのに、もうこんなに人がいるのか。


「みんな待つの好きだねー。」


「待つ時間も楽しかったりするからね。」


「あー……なるほど。じゃあ、ちょっと待っても大丈夫?」


「うん、もちろん。」
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