カナリア
「あ、あの、ぶんたさ、ん!ありがとう。」


「楽しんだ?」


「うん!きれいだった!えへへ。」


「なんだ、そんな風に笑えるんじゃん。」


「……。おれ、えっと……しゃべるの……うまくなくて……」


「何で?」


「なんで!?」


「何一つ不自由してないじゃん。優しい姉さんがいるじゃん。あれ、兄さんもいたっけ。何、不満なわけ?」


「……。」


「もしかして、色々と世話やかれすぎて、自分で考えるのやめちゃったタイプ?」


「ぶんたさんの言ってることは、むずかしい。」


「そう?もっと自由に色々したら?って。」


「……。」


「隼は何が好き?」


「好き……。しゃ、写真。」


「えっ写真!?またえらい渋いの好きだな。へーいいじゃん、いいじゃん。かっこいいな。」


「カメラ、で、色々とるの、おもしろそうだなって。かえでくんが、カメラ、好きで……。

おれも、いいなーっておもってて。」


「え、撮ろうよ。」


「でも、まだ早いって。みんな言うから。」


「好きに早いも遅いもないし。子供が遠慮なんかすんなよ。

あー、でもアレか。写真撮るだけじゃないよな。デジカメだとPCもいるってなると、確かに早いかもな。」


あ、今携帯型音楽プレイヤーでも写真撮れるし、それならいけるか……?


「ちょっと知り合いに聞いてみるよ。」


「えっええっ」


「多分、いけると思う。

子供時代に、子供だから、って理由で断られるのは、一番よくないとおれは思ってる。」


「……。ぶんたさんは、いろいろ、できなかったの?」


「うーん……。おれ、小さい頃に両親が離婚してて。色々我慢したよ。

我慢した結果、コレになったんだけど。」


「あっ……ご、ごめんなさい。……いいたくなかった?」


(へー、この歳で人に気を遣えるんだ。)


「すごいすごい。」


「?????」


「じゃあ、調達できたらお姉ちゃんに渡しておくな。気をつけて帰れよー。」


--------------

「というわけで、これ。」


「ナニコレ!?スマホ?」

いつものように、カナと食堂で勉強をしている時に、スマホを差し出した。


「前に使ってたやつ。」


「ん??」


「―――を、隼にあげて。」


「隼に?!」


「この間、偶然会ったんだよ。写真撮るの好きそうだったから、何かカメラ無いか木場に相談したらコレもらった。古いっていっても一年前とかだし、別に十分でしょ。」


「いいの?わー……ありがとう……!きっと喜ぶ……!

知らなかったな、写真好きなの。」


「自分の弟だろ。」


「弟なんだけどねー。引っ込み思案というか、今すごく難しい時期。男の子だし、楓に結構頼りっきりな所あるかも。

あ、仲が悪いわけじゃないよ。」


「ふーん。ま、そういうのも必要なのかも。」


「?」


「あんまり気を遣わなくていい兄弟っていうの。」


「文太君は、妹いたよね。どんな感じなの。」





「……。内緒。」
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