カナリア
隼に、文太君から預かったものを渡す。
「スマホのお古だって。写真も撮れるし音楽もいれれるって。」
「わ、わー!!!わー!すごい!やったー!!!写真とる……!」
「―――の、前に。」
というわけで、文太君にお礼を言いに来た、
というか言わせに来た。
「ぶぶぶぶぶんた、さん、あああありがとうございました。」
「どもりすぎ。まだ、写真撮ってないの?」
「おねえちゃんが……お礼言ってからだって。」
「私が悪いみたいに言わないの。はい、お礼言ったから、撮ってきてもいいよ!」
「わーい!」
そういって、バラ園の方へと姿を消していった。
人見知りで引っ込み思案かと思ったら、好きな物に対しては大いに積極的だ。
消え行く後ろ姿を楽しそうに文太君が見ていた。
「ありがとう、文太君。私の方からもお礼言うね。お金とか、どうしたらいい?」
「いいよ。どうせ捨てるつもりだったし。」
「じゃあ、何か……お礼を…。」
「うーん……そうだなー。ちょっと考えさせて。」
「……ぐ、あんまり要求されると、困るので折り菓子とかどうでしょう。」
「警戒しすぎ。あ、菓子はセイに食われるから、無しで。」
「あ。食べられちゃうんだ。また、聞かせて。なるべく、応えられる様に頑張るから!」
期待して待ってる、なんて笑ってるけど、受け取る気ないんだろうな。
「文太君って面倒見いいんだね。きついからちょっと、そうは見えにくいけど。」
「何、惚れ直した?」
「えっ。」
「アハハ、すぐ身構える。」
「み、身構えて、ないよ。」
「そう?」
「まって、文太君その、手はなに。」
「腰を抱いたらどうなるかって。」
「反応楽しんでるでしょ!!」
「かもね。」
「おねえちゃーん。」
ゴールキーパーヨロシク、腰を低くして守りに徹していたが、遠くから隼の呼ぶ声が聞こえて一時休戦に入る。
小さな体を一生懸命揺らしてコチラに走ってくるが、もつれてその場に大きく倒れ込んだ。
手に持っていたスマホは無事だったようだが、暫く唸って起き上がらない。
痛かったのだろう。これは、泣くかもしれない。
駆け寄ろうとした私より先に文太君が、ゆっくりと動いていた。
「大丈夫、ほら立って。」
地面にへばりついた隼を立たすわけでもなく、動くのを待っていた。
私なら、多分、駆け寄って立ち上がらせて、服の泥を払って――まで、していたと思うが。
文太君がどんな行動をとるのか、気になって動きを止めて見守った。
「う……。」
手を貸すわけではなく、ただ、隼が起き上がるのを待つ。隼も暫く痛くてごねていたが、文太君が何もしてくれない為に、観念して唸りながら、しぶしぶ起きた。
「痛かった?」
「う……。」
「えらいな、隼は。がんばったな。」
「……えらい、の?」
「えらいよ。痛いのによく我慢したな。かっこいい。あ、手すりむけてる。とりあえず、手を洗おうか。」
「そっか……え、えらいんだ……。」
「はい、服の汚れ払って。足痛いか?おぶってやろうか?」
「ううん、いい!」
「カナー。ちょっと手洗ってくる。」
知らない間に隼が手懐けられていて、驚いた。
あのトップオブ人見知りが。
あれ、おかしい。私より兄弟に見えてきた。
暫く季節のバラをそれなりに楽しんで、家が近い文太君とはそこで別れて、隼と共に駅まで歩いた。私達の家はここから三駅だ。
帰るまでの間、隼にスマホで撮った写真を見せられた。
もちろん、うまくは撮れていないが、花が好きなんだと知った。
「帰りにお花、買ってあげようか?」
「えっいい。……からすと、かわいそうだから……。」
なるほど、だからバラ園に通っているのか。
駅まで歩いて気づいた。カバンの中で携帯が鳴っている。母だ。明日のパン買ってきて、だそうだ。
スーパーでもいいけど。楓のバイト先近いから寄ろうかな。
「スマホのお古だって。写真も撮れるし音楽もいれれるって。」
「わ、わー!!!わー!すごい!やったー!!!写真とる……!」
「―――の、前に。」
というわけで、文太君にお礼を言いに来た、
というか言わせに来た。
「ぶぶぶぶぶんた、さん、あああありがとうございました。」
「どもりすぎ。まだ、写真撮ってないの?」
「おねえちゃんが……お礼言ってからだって。」
「私が悪いみたいに言わないの。はい、お礼言ったから、撮ってきてもいいよ!」
「わーい!」
そういって、バラ園の方へと姿を消していった。
人見知りで引っ込み思案かと思ったら、好きな物に対しては大いに積極的だ。
消え行く後ろ姿を楽しそうに文太君が見ていた。
「ありがとう、文太君。私の方からもお礼言うね。お金とか、どうしたらいい?」
「いいよ。どうせ捨てるつもりだったし。」
「じゃあ、何か……お礼を…。」
「うーん……そうだなー。ちょっと考えさせて。」
「……ぐ、あんまり要求されると、困るので折り菓子とかどうでしょう。」
「警戒しすぎ。あ、菓子はセイに食われるから、無しで。」
「あ。食べられちゃうんだ。また、聞かせて。なるべく、応えられる様に頑張るから!」
期待して待ってる、なんて笑ってるけど、受け取る気ないんだろうな。
「文太君って面倒見いいんだね。きついからちょっと、そうは見えにくいけど。」
「何、惚れ直した?」
「えっ。」
「アハハ、すぐ身構える。」
「み、身構えて、ないよ。」
「そう?」
「まって、文太君その、手はなに。」
「腰を抱いたらどうなるかって。」
「反応楽しんでるでしょ!!」
「かもね。」
「おねえちゃーん。」
ゴールキーパーヨロシク、腰を低くして守りに徹していたが、遠くから隼の呼ぶ声が聞こえて一時休戦に入る。
小さな体を一生懸命揺らしてコチラに走ってくるが、もつれてその場に大きく倒れ込んだ。
手に持っていたスマホは無事だったようだが、暫く唸って起き上がらない。
痛かったのだろう。これは、泣くかもしれない。
駆け寄ろうとした私より先に文太君が、ゆっくりと動いていた。
「大丈夫、ほら立って。」
地面にへばりついた隼を立たすわけでもなく、動くのを待っていた。
私なら、多分、駆け寄って立ち上がらせて、服の泥を払って――まで、していたと思うが。
文太君がどんな行動をとるのか、気になって動きを止めて見守った。
「う……。」
手を貸すわけではなく、ただ、隼が起き上がるのを待つ。隼も暫く痛くてごねていたが、文太君が何もしてくれない為に、観念して唸りながら、しぶしぶ起きた。
「痛かった?」
「う……。」
「えらいな、隼は。がんばったな。」
「……えらい、の?」
「えらいよ。痛いのによく我慢したな。かっこいい。あ、手すりむけてる。とりあえず、手を洗おうか。」
「そっか……え、えらいんだ……。」
「はい、服の汚れ払って。足痛いか?おぶってやろうか?」
「ううん、いい!」
「カナー。ちょっと手洗ってくる。」
知らない間に隼が手懐けられていて、驚いた。
あのトップオブ人見知りが。
あれ、おかしい。私より兄弟に見えてきた。
暫く季節のバラをそれなりに楽しんで、家が近い文太君とはそこで別れて、隼と共に駅まで歩いた。私達の家はここから三駅だ。
帰るまでの間、隼にスマホで撮った写真を見せられた。
もちろん、うまくは撮れていないが、花が好きなんだと知った。
「帰りにお花、買ってあげようか?」
「えっいい。……からすと、かわいそうだから……。」
なるほど、だからバラ園に通っているのか。
駅まで歩いて気づいた。カバンの中で携帯が鳴っている。母だ。明日のパン買ってきて、だそうだ。
スーパーでもいいけど。楓のバイト先近いから寄ろうかな。