カナリア
「パン一斤ください。」


「かえでくーん!おしごとおつかれさまー!」


「ありがとう。隼がいるなんて珍しいじゃん。
あ、もうちょっとであがるし、一緒に帰ろう。」


「やったー!」



楓のバイトをまって、三人で帰っている。隼はスマホに夢中で、あちこち写真を撮り続けている。またコケなければいいんだけど。


「あれ何。」


「友達から、お古のスマホもらって写真とってるの。」


「へー。」


「写真撮るの好きなんだって。知ってた?」


「へー!まじかー。知らなかった。知ってたらコンデジあげたのに。

つっても、管理大変だしスマホがちょうどいいよな。」


「かえでくーん。」

隼は楽しそうに走り回っている。


「今日もこけたばっかりなんだ。」


「え、まじで。大丈夫か。」

と、心配も虚しく。昼間と同じくして派手にこけた。痛さを我慢しているのだろうが、地面と平行だ。


急いで楓がかけよって、隼を立たせて服の泥を払い落とす。怪我したところが無いか入念にチェックする。


「大丈夫か!?痛くないか!?あーあー…ひどくすりむいたなー……」


 なるほどなぁ。


「?どうした。」


「いや、楓も優しいんだなぁって……」


「お前はさ、自分の弟の心配しろよ!」



「泣かないもんね?隼?」


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本当は誰かに大丈夫と、心配してほしい。

それが必要だった。

でも、誰もいなければ、一人で立つしかない。

そう、俺は、一人で歩く方法を、

傷ついた身体を引きずりながら、

這って、会得しなければいけなかった。


なりふりかまわず。
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