カナリア
愛して5
スキンシップは多いが、初めての時と比べて性急な物ではない。
むしろそれが目的ではなくて、私の反応を楽しんでいるような、本当にじゃれあっている感じだ。
実家の犬を思い出した。勉強ばかりして相手しないと服をひっぱったり、筆記用具を隠したり、腕の上に乗ったりと、全力で気を引こうとする。
あんな感じに似ている。
その時に笑う文太君の表情は、歳よりだいぶ若く見えた。意地悪だが、キライじゃないな、と思う。
だってとても楽しそうだ。
楽しそうなだけに。
--------
「文太君、この間は、その、ありがとう。」
食堂で、文太君と話していると、弱気そうな青年がやってきた。確か……中村君。文太君に誘われて受けた講義で森田君に絡まれていた人だ。
「いーえ、どう致しまして。役に立った?」
「す、すごいね文太君……。やっぱり首席は違うなぁ……。」
「いや、関係ないでしょ。」
「あー文太くんじゃん。」
そこに、ガラの悪い青年達が声をかけてきた。
あれは……森田君の後ろにいた人達だ。取り巻きってやつ。
「えーなになに。もしかして、授業レポート?」
「ねえねえ、お優しい文太君、俺達も助けてよ。ギャハハハ。」
「あれ、今日は森田いねーの?いつも一緒じゃん。」
「はあ?いつも一緒じゃねーし。」
「まじで、森田がいないと何もできないのに?」
「んだと……っ。」
文太君が煽ると、殴りかかろうとした。
「はいはい、暴れないの。森田じゃねーんだから、チクられたら単位、飛ぶんじゃねーの。」
取り巻き達は、その一言でその場を離れた。よかった、喧嘩にならなくて。
「ぶ、文太君。」
「大丈夫、あいつら森田の腰巾着だから。雑魚い雑魚い。
中村君も気をつけて帰ってね。あいつらに出会わないように。」
私の心配をよそに、文太君はひょうひょうとしていて、もう中村君を気遣って声を掛けている。
「……。」
「ごめんごめん。テストも近いから最近、人気者でさー。心配した?」
「し、心配するよー……。怖いし。」
「あ、ごめん。カナの事、考慮してなかったな……。」
私の事はいいのだ。文太君が大丈夫なら、それでいいけど…。
「あ、さっき首席って聞こえたけど何。」
「ほら、おれ、記憶力いいから。」
「それだけで、首席になれるの!?」
「なれない。おれの努力と才能?」
「うわー首席っぽくない回答もらった!!
……。
……そんな頭のいい文太君と、同じ学部なんだね。森田君だっけ……。あ、いや、その100パーセント偏見なんだけど。」
文太君の学部は全国的に見ても上だ。屈指だ。クラスの大半が浪人生と留年生で溢れてるといっていた。
「森田も別に頭悪くないよ。わっるい方に大学デビューしちゃったんだよ。
難しいよね。本人がどんだけ頑張ったところで、外装っていうのは大きく作用するんだよ。」
「外装?」
「極端に言って、たとえば、だよ。どんだけおれが悪い事しても、首席ってだけで優勢だからね。この大学内なら、まあまず、おれを疑う人なんていないよね。」
「……。頑張ったんだね。」
「……。フフ、そうだね。頑張ったんだと思うよ。
……。森田は、ベタなんだけど市議会議員の息子なんだよ。」
森田君について、文太君が教えてくれた。
森田君だって、努力をしてこの学部に入った。……けど、あのきつい性格で、裏口入学を疑われたり、色々あって、それで今はすねて、あのような様子になっているらしい。
……文太君って……てっきり森田君の事キライなんだと思ってたけど、今の話を聞いてるとちょっと違うんだろうか。
「あー。どっか行こうか。カフェとか?」
私が考え込んでいると、気を遣ってくれたのか文太君はそう言った。
遠慮しても、おれがそうしたいから、と言って
私のカバンを持って席をたって、行ってしまった。
むしろそれが目的ではなくて、私の反応を楽しんでいるような、本当にじゃれあっている感じだ。
実家の犬を思い出した。勉強ばかりして相手しないと服をひっぱったり、筆記用具を隠したり、腕の上に乗ったりと、全力で気を引こうとする。
あんな感じに似ている。
その時に笑う文太君の表情は、歳よりだいぶ若く見えた。意地悪だが、キライじゃないな、と思う。
だってとても楽しそうだ。
楽しそうなだけに。
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「文太君、この間は、その、ありがとう。」
食堂で、文太君と話していると、弱気そうな青年がやってきた。確か……中村君。文太君に誘われて受けた講義で森田君に絡まれていた人だ。
「いーえ、どう致しまして。役に立った?」
「す、すごいね文太君……。やっぱり首席は違うなぁ……。」
「いや、関係ないでしょ。」
「あー文太くんじゃん。」
そこに、ガラの悪い青年達が声をかけてきた。
あれは……森田君の後ろにいた人達だ。取り巻きってやつ。
「えーなになに。もしかして、授業レポート?」
「ねえねえ、お優しい文太君、俺達も助けてよ。ギャハハハ。」
「あれ、今日は森田いねーの?いつも一緒じゃん。」
「はあ?いつも一緒じゃねーし。」
「まじで、森田がいないと何もできないのに?」
「んだと……っ。」
文太君が煽ると、殴りかかろうとした。
「はいはい、暴れないの。森田じゃねーんだから、チクられたら単位、飛ぶんじゃねーの。」
取り巻き達は、その一言でその場を離れた。よかった、喧嘩にならなくて。
「ぶ、文太君。」
「大丈夫、あいつら森田の腰巾着だから。雑魚い雑魚い。
中村君も気をつけて帰ってね。あいつらに出会わないように。」
私の心配をよそに、文太君はひょうひょうとしていて、もう中村君を気遣って声を掛けている。
「……。」
「ごめんごめん。テストも近いから最近、人気者でさー。心配した?」
「し、心配するよー……。怖いし。」
「あ、ごめん。カナの事、考慮してなかったな……。」
私の事はいいのだ。文太君が大丈夫なら、それでいいけど…。
「あ、さっき首席って聞こえたけど何。」
「ほら、おれ、記憶力いいから。」
「それだけで、首席になれるの!?」
「なれない。おれの努力と才能?」
「うわー首席っぽくない回答もらった!!
……。
……そんな頭のいい文太君と、同じ学部なんだね。森田君だっけ……。あ、いや、その100パーセント偏見なんだけど。」
文太君の学部は全国的に見ても上だ。屈指だ。クラスの大半が浪人生と留年生で溢れてるといっていた。
「森田も別に頭悪くないよ。わっるい方に大学デビューしちゃったんだよ。
難しいよね。本人がどんだけ頑張ったところで、外装っていうのは大きく作用するんだよ。」
「外装?」
「極端に言って、たとえば、だよ。どんだけおれが悪い事しても、首席ってだけで優勢だからね。この大学内なら、まあまず、おれを疑う人なんていないよね。」
「……。頑張ったんだね。」
「……。フフ、そうだね。頑張ったんだと思うよ。
……。森田は、ベタなんだけど市議会議員の息子なんだよ。」
森田君について、文太君が教えてくれた。
森田君だって、努力をしてこの学部に入った。……けど、あのきつい性格で、裏口入学を疑われたり、色々あって、それで今はすねて、あのような様子になっているらしい。
……文太君って……てっきり森田君の事キライなんだと思ってたけど、今の話を聞いてるとちょっと違うんだろうか。
「あー。どっか行こうか。カフェとか?」
私が考え込んでいると、気を遣ってくれたのか文太君はそう言った。
遠慮しても、おれがそうしたいから、と言って
私のカバンを持って席をたって、行ってしまった。