カナリア
私達は、セイに教えてもらったカフェにやってきた。


「前来た時は秋の味覚パスタが美味しいかったんだけどまだやってるかな~。」


「……。…………。あー……。おれ、飲み物だけでいいや。」


「いいの?もしかして体調悪い?」


「うーんっと、そういうワケじゃないんだけど。

むしろ調子よかったから、食えるかなって思ったんだけど、やっぱ駄目だな。」


 !!!!

「あ……!も、もしかして外食恐怖症とか?ごめん!気づかなくて。」


そういえば、私と会う時、文太君が食べてるの、見たことなかった。


いつも飲み物だけ注文して、私が食べるのを見てるだけ。


「いや、なんでカナが謝ってんの。意味無く謝んのやめて。おれが誘ったんだから。

ごめん。というわけで、気にせず食べて。」


そう言われても食べ辛い!


「人が食べてる所をみるのはキライじゃないよ。カナなんか美味しそうに食べるなーって。羨ましい。」


「一口だけでも、食べてみる?」

さつま芋と鶏肉のクリームパスタ。

さつまいも、と文太君が呟くので、店員さんに取り皿を頼もうとした。


「あー。」


「何その口。」


餌を待つヒナ鳥のように口をぱっかりあけて、待っているこの姿勢は。もちろん、食べさせて、という事なのだろうが。


文太君は、私をからかうのが好きだ。ここでギャーギャー騒ぐのは文太君の思うツボだ。


意を決して、サツマイモにフォークを突き刺して、その口にフォークを押し込んでやった。


「んんん!!あつい!」


おいしい?と聞くと、そうじゃなかったのだろう複雑そうな表情を返してきた。

暫く口をもぐもぐさせて、お冷で一気に流し込んだ。


駄目だった?と聞くと、詰まりながら美味しかった、と言う。


「食べられたね。」


「……あ、そう、だね。」


「けど、文太君、まだマシな方じゃないかな。ひどい人って、店入っただけで気分悪くなる人いるよね。

あと焦れば焦る程だめだし、ちょっとずつ頑張ればいいし。大丈夫だった思い出を積み重ねていくっていうのかな。」



「何の話?」



文太君はさっきから、ポカンとしている。


「え、外食恐怖症の克服方法?」


「おれ、それじゃないよ。」


「違うの!?」
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