カナリア
「心配だからって、見張りって、
アンタ結構本気なんだ!

へーへー。カラス君とうまくいってるじゃん。へー。」


「そんなんじゃないってば。サトミならクラブ行った事あると思ってたんだけどなぁ……。」


「アタシをなんだと思ってんの……

まーアタシも先輩に連れて行ってもらおうと思ったけど、最近チェック厳しいから、どこもかしこも未成年オコトワリなんだよね。」


「へー……。でも森田君って人、通ってるって。」


「やばい人と繋がってんじゃないの~……顔パス、みたいな~~。

カラス君が目指してるところ、結構この辺じゃ有名なナンパ箱じゃん。」


「ナンパ?ハコ?」

(文太君、本当に大丈夫かな……)


彼を追って繁華街にきた。


サトミがこのあたりに詳しい為に、案内してもらっている。この辺りなら、多分あのクラブだろうと。


夜中の繁華街は怪しく危険な空気が立ち込めている。ちょっと道を外れたら、薄暗い通りがあって、帰れない気がするほどに異質だ。


クラブは入れないにしろ、サトミについてきてもらって正解だった。



時計は19時前。


夜通しやっているものだと思っていたファ、営業時間は翌1時までと聞いた。


思ったより健全なのだなーと思いながら、色々教えてくれるサトミは成人したら速攻クラブデビューするのだろうなと思った。


サトミは、同じ学部の友達。


派手で男好きだが、さばさばして飾らない性格が、趣味タイプは違うのに相性は良かった。


そうだ、彼女に無理矢理誘われて、

学部の飲み会に連れて行かれて、

カラス君達と会ったんだと、思い出していた。



「あ!あれ!カラス君じゃない!?」


急いで物陰に隠れる。

カラス君……もとい、文太君は、森田君が来るのをクラブから少し離れた建物で待っていたようで。

明らかに生きてる世界が違うような人達に囲まれた森田君を、何のためらいもなく呼び止めた。


「森田!!」


一斉に、文太君へと視線が注がれて、関係ないはずの私がすくむ。


もちろん、絶対、そんな事はない筈だ。
ちょっと調べたら仕事帰りのリーマンだっていると聞いていたし。


しかし、その場に居た人達の威圧感は、まじめな私を“クラブ通いする人は不良”と、一瞬で決めつけてしまうほどの物だった。


森田君も相当だと思ったが、上には上がいる。



「うわ……イキマショー先輩。」


「待てよ、森田!」


「んだよ……。」


「ごめん!!!この間の事、謝る!!」


「……!?」


「お前に、ひどいことをした。

許してもらえるか分からないけど、謝らせて!!」


「……」
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