カナリア
「カナー。見てみて!手懐けた。」


「うわーーー!!森田君がいるー!」


そう、森田君がいる。

昼食のお誘いを受けて、学食にやってきたら、
文太君の横には森田君が座っていた。


「森田、これ、おれの彼女のカナ。」


「ドーモ、森田です。」


「えっ!?あ!?あの……!」


「つーか、あんたの彼氏、本当、何。
すげー、しつけーんだけど!毎日毎日毎日!」


「そ、心折れてくれたの。」


どうやら、毎日クラブに通いつめたらしい。しまいには、警備員とも仲良くなるほどに。

あまりにも文太君がしつこいので、成人するまで森田はクラブには来るなと、先輩に言われてしまったらしい。


「見た目によらず、センパイが、理解ある人でよかったよ~~。」


「……クッソ。そりゃ毎日毎日待ち伏せしてたら気持ち悪がるに決まってんだろう……。

あと、俺の知らないところでどんだけ根回ししてたんだよ!」


「久しぶりに頑張っちゃったよ。

おれさ、口悪いから、お前みたいなヤツじゃないと張り合い無くてさー。」


「……。口じゃなくて、性格も悪いけどな。」


「やだー!褒め言葉!

あ、つーかお前、学校サボってる間に、またピアス開けただろ!」


「お前はどこ見てんだよ!」


「拡張とかすんなよ!男のピアスは若い内にしかできねーし、就職不利になんだろ!」


「うるせー!」


文太君が、嬉しそうだ。

自然と、笑みがこぼれた。


彼との関係は不思議で、よくわからなかったが

非行に走りそうになる少年を必死に止める熱血教師の様だった。

非行少年は、熱意に負けて大人しく学校に帰ってきた。


直ぐに変わるのは無理だろうが、諦めにも似た落ち着きを見ると、大丈夫だろうなと思う。



そして、先ほど《彼女》と紹介された事を思い出して……耳まで赤くなったのが、自分でも分かった。


まあ文太君の事だ。


私をからかう目的なのと、友達と説明して深く追求されるよりは彼女、と言い切ったほうが楽だと思ったからだろう。



「飯、食おうか。」


そう文太君が言うと、森田君は、図書館に行くと言った。次の授業にもしっかりでるらしい。



「良かったね文太君。」


「ありがとう。飯買ってくる。」


……前のカフェの事を思い出して。


ご飯、大丈夫だっただろうかと、思ったが、
直ぐに蕎麦を買ってきた。


ちょっと不器用そうに、箸を使って蕎麦をすする。


飲み込もうか飲み込むまいか、したところで、咳き込みそうになるのを必死で耐えた。


「ぐっ……!ゴホッゴホ……!!」


「文太君!み、水!!!

無理して食べなくても……!」


「……っ!

まだ、駄目かよ……。」






「思い知るよ。

自分が、

普通の人間じゃないんだって事。」
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