カナリア
「あ、うん。分かったー!」


「軽いね!!!?」


「あれ、そうかな。軽いかな。いや、軽くないよ!!

ちょっとでもお葬式ムード回避しようとしただけだよ!」


「……」


セイは、何でもないことのように言う。


「カナ。

俺達は、俺達なりに頑張ってきたつもりだよ。
“彼”が生きる為に必死に。

でも、結局駄目だった。文太は特に頑張ってたから、ショックは大きかっただろうね。

もう、その気が無いなら誰かが引継がなくちゃいけない。―――この人生を。

そういう事なんだなって、思ったよ。
カラス君が、カナを連れてきた理由って。」


「……私?」


「俺達は、この病気の事を誰にも話していないから。

それについて理解をしている、そして、全員の人格と交流があるって、俺達にとっては、とっても尊い事なんだよ。

ありがとう、カナ。

友達でいてくれて。」



「……。

そんな、大した物じゃない。」



「そうかな、大した物だよ。

友達を持つ事を諦めてしまった俺達にとって。」



「セイ……


なんだか……お別れ、みたい」



「じゃあ、カナは選んでくれる?


―――俺を?」



「……!?」



「夢がある。夢があった。


そして、一つの人格じゃなくて、

人間としていきたいと、強く思う時がある。

どうして、この身体は俺のじゃないんだ。
なんで、俺だけ、俺ばっか。

このまま居ても、誰かの人生を犠牲にするだけだ。


呑まれてしまう前に、潔く引きたいな。」


「セイ……」


「辛い事も多かったけど、でも、楽しかったんだよ。

俺の人生は。


十分じゃん。」


分離する理由が無くなった人格は、統合へと進むというが。


確かに彼らは“諸星ユウキ”の人格なのだろうが


短い間だがそれぞれと

友達として付き合ってきた。



「やだな~~泣かないで~~。女の子の涙って本当に凶器だよ~~。」




友達との、別れだった。


それを促したわけではないのに。


結果、追い込んでしまっていた。
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