カナリア
木場
「えっと……こんな広い図書館で待ち合わせ!?」
待ち合わせ場所として指定された図書館を見上げた。
明治時代の建物がそのまま図書館として使われている。
ネオバロック様式のレトロ建物は国の重要文化財に指定されているはずだ。
家の近所に図書館があった為、こちらは一度も使った事がない。
ギリシャ神殿を思わせる正面玄関が大きな顔をして待ち構えていた。
入り口付近で待ち合わせしてくれてもいいのにと思いながら広い図書館へと入ることにした。
本を選んでいるのか、読んでいるのかもさえ分からない状態で、とりあえず端から見ることにした。
メールも返ってこない彼は、奥の読書スペースで静かに本を読んでいた。
名前を、《木場》という。
ここにたどり着くまで10分かかってしまった。
昼過ぎの図書館は利用者がまばらだった。
空いてる彼の前の席に座って、携帯を取り出す。わざわざ空いてる席ではなく目の前に座った私に気づいた彼は、携帯をカバンの中から取り出して、しばらく見つめた。
お構いなしに私はメールを打った。
“はじめまして。カナです。”
“はじめまして、木場です。”
“すごく探しました。”
“ゴメン”
“今度からは、もう少し待ち合わせの場所の詳細がほしいです”
“なるほど”
彼を、若干にらみつける感じで視線を向けた。するとニコっと笑ってくれた。そうじゃない。
ゆっくり人差し指を扉に向けたので、外に出ようという合図なのを理解した。
図書館近くのカフェへ入った。
「えっと……どうも……。」
「どうも。カナ、さん?」
「えっと……木場、さん。」
「あっ、さんづけやだな。」
「え!?えっとじゃあ……木場…………君?」
「うん、それがいいな。」
「は、はあ…木場…君…」
えっと、年上だよね。一応敬語で…いいよね…?
「そんな訳で、カナさん。僕に用事って?」
木場君が笑みを浮かべて聞いてくる。
「えっと…お近づきに……なりたくて。」
「えー。」
「えっ……あれ?!カラス君に聞きませんでした?」
木場君は穏やかに話しているのに、私はなぜか冷や汗をかいてしまっている。
「聞いたよ。」
「と、友達になりましょう……」
「うーん。考えるなぁ。友達ってなろうってなるものかな?」
「そ、そうですね…ごもっともです……。」
木場君は続ける。
「友達の定義も人によってそれぞれだろうし。君の望む友達になれるかどうか分からない。」
「そうですね……。」
あれだけ話しやすかったセイが一番最初だった理由が大変、分かった。
面倒でテンポのつかめない人だ。そんな印象を強く受ける。
「ああ、否定に聞こえたのならごめんね。興味はあるんだよ。」
「えっ」
「君が……そうだな……」
それまで温和だった彼の表情が少し変わった気がした。空気が張り詰めたように感じ、木場君の雰囲気に違和感を感じる。
「君にはいい経験になるだろうし、僕は一人、知り合いができるわけだ。」
「えっと、はい。」
「いいよ、とりあえず友達になるところから始めようか。
その辺り、僕はあまり分からないから、君に任せようと思う。」
「こ、光栄です。
じゃ、じゃあ……えっと……図書館にいることが多いんですか?」
「んー、そうだね。時間があるときにきてるよ。本を買っちゃうと部屋に置く場所困るからね。」
「あー!分かりますー!」
「ここの図書館は広いだけあっていろんなジャンル網羅してるしね。視聴覚室も充実してるしね。」
「へー、映画とかも見られるんですか?」
「そうそう。」
「じゃあ、普段は何してるんですか?」
「えー。それは、もっと仲良くなってからのお楽しみ、ね。」
「あ、はい。……好きな物について聞いても良いですか?」
「ざっくりしてるね。食べ物?趣味?」
「えっと、本当ですね。
じゃあ趣味で……。」
「んー……内緒。」
「えー!」
彼という人を知ろうと、質問してみたが、ほとんど答えてもらえなかった気がする。
次の質問に頭を悩ませていた私に木場君は笑って言った。
「フフ、お見合いみたい。」
「えっ」
「合コンかな?僕参加したことないから分からないんだけど。こんな感じ?」
「えっと、私も分からないです。」
「参加しなよー」
「えっ」
「経験は君を豊かにするよ。」
「ご、ごもっともなんですけど……。参加する事が目的なのもちょっと違う気が……。」
「そうか、恋人をみつけないといけないものね。うーん、難しいね。」
「いや、そういうワケじゃないんですけど……」
「ねえねえ、合コンに参加する事があったら僕も呼んでよ。」
「えっ。普通、数合わせなら、女子しか声かけないと思うんですけど。」
「なるほど。わかった。女子側で参加する。」
「なんで!!」
「あっ、じ、時間大丈夫です?」
「んー、そうだね。また会えるものね。
約束だよ。また、絶対会おう。」
すっと出された指に釘付けになった。指きりだ。
距離感の掴み辛い彼だと思ったが、私に対して少なからず好意的なのを感じてふと笑みがこぼれた。
緊張していたらしく、縮こまっていた顔の筋肉が解放されたのが分かった。
「もちろん。」
その場のノリ的なやつで、何の抵抗もなく小指を絡ませた。
木場君の小指は、思った以上に冷たくてビックリした。
「……。木場君って、冷え性なんですか?」
「あ、そうかも。末端冷え性。ごめん、冷たかったかな。」
「あ、いえ……。」
「あとね、緊張していたからかも。」
「緊張?」
「そりゃね。ふふ、よろしくね、カナさん。」
-----------
木場:会ったよ。
文太:@木場 知ってるし。ねえ、報告の意味分かってる?
セイ:@木場 どうだった?ヽ(・∀・)ノちゃんと話せた?
木場:合コン参加する事があったら呼んでもらう事になったよ。
文太:@木場 はあ?!なんで!!アンタ男なんだから数合わせに呼べないだろ!
文太:馬鹿じゃないの
岡目:えっ木場女装すんの?
セイ:@木場 合コン行って、どうすんの?(´ε`;)
木場:@セイ 経験値あげてくる。
待ち合わせ場所として指定された図書館を見上げた。
明治時代の建物がそのまま図書館として使われている。
ネオバロック様式のレトロ建物は国の重要文化財に指定されているはずだ。
家の近所に図書館があった為、こちらは一度も使った事がない。
ギリシャ神殿を思わせる正面玄関が大きな顔をして待ち構えていた。
入り口付近で待ち合わせしてくれてもいいのにと思いながら広い図書館へと入ることにした。
本を選んでいるのか、読んでいるのかもさえ分からない状態で、とりあえず端から見ることにした。
メールも返ってこない彼は、奥の読書スペースで静かに本を読んでいた。
名前を、《木場》という。
ここにたどり着くまで10分かかってしまった。
昼過ぎの図書館は利用者がまばらだった。
空いてる彼の前の席に座って、携帯を取り出す。わざわざ空いてる席ではなく目の前に座った私に気づいた彼は、携帯をカバンの中から取り出して、しばらく見つめた。
お構いなしに私はメールを打った。
“はじめまして。カナです。”
“はじめまして、木場です。”
“すごく探しました。”
“ゴメン”
“今度からは、もう少し待ち合わせの場所の詳細がほしいです”
“なるほど”
彼を、若干にらみつける感じで視線を向けた。するとニコっと笑ってくれた。そうじゃない。
ゆっくり人差し指を扉に向けたので、外に出ようという合図なのを理解した。
図書館近くのカフェへ入った。
「えっと……どうも……。」
「どうも。カナ、さん?」
「えっと……木場、さん。」
「あっ、さんづけやだな。」
「え!?えっとじゃあ……木場…………君?」
「うん、それがいいな。」
「は、はあ…木場…君…」
えっと、年上だよね。一応敬語で…いいよね…?
「そんな訳で、カナさん。僕に用事って?」
木場君が笑みを浮かべて聞いてくる。
「えっと…お近づきに……なりたくて。」
「えー。」
「えっ……あれ?!カラス君に聞きませんでした?」
木場君は穏やかに話しているのに、私はなぜか冷や汗をかいてしまっている。
「聞いたよ。」
「と、友達になりましょう……」
「うーん。考えるなぁ。友達ってなろうってなるものかな?」
「そ、そうですね…ごもっともです……。」
木場君は続ける。
「友達の定義も人によってそれぞれだろうし。君の望む友達になれるかどうか分からない。」
「そうですね……。」
あれだけ話しやすかったセイが一番最初だった理由が大変、分かった。
面倒でテンポのつかめない人だ。そんな印象を強く受ける。
「ああ、否定に聞こえたのならごめんね。興味はあるんだよ。」
「えっ」
「君が……そうだな……」
それまで温和だった彼の表情が少し変わった気がした。空気が張り詰めたように感じ、木場君の雰囲気に違和感を感じる。
「君にはいい経験になるだろうし、僕は一人、知り合いができるわけだ。」
「えっと、はい。」
「いいよ、とりあえず友達になるところから始めようか。
その辺り、僕はあまり分からないから、君に任せようと思う。」
「こ、光栄です。
じゃ、じゃあ……えっと……図書館にいることが多いんですか?」
「んー、そうだね。時間があるときにきてるよ。本を買っちゃうと部屋に置く場所困るからね。」
「あー!分かりますー!」
「ここの図書館は広いだけあっていろんなジャンル網羅してるしね。視聴覚室も充実してるしね。」
「へー、映画とかも見られるんですか?」
「そうそう。」
「じゃあ、普段は何してるんですか?」
「えー。それは、もっと仲良くなってからのお楽しみ、ね。」
「あ、はい。……好きな物について聞いても良いですか?」
「ざっくりしてるね。食べ物?趣味?」
「えっと、本当ですね。
じゃあ趣味で……。」
「んー……内緒。」
「えー!」
彼という人を知ろうと、質問してみたが、ほとんど答えてもらえなかった気がする。
次の質問に頭を悩ませていた私に木場君は笑って言った。
「フフ、お見合いみたい。」
「えっ」
「合コンかな?僕参加したことないから分からないんだけど。こんな感じ?」
「えっと、私も分からないです。」
「参加しなよー」
「えっ」
「経験は君を豊かにするよ。」
「ご、ごもっともなんですけど……。参加する事が目的なのもちょっと違う気が……。」
「そうか、恋人をみつけないといけないものね。うーん、難しいね。」
「いや、そういうワケじゃないんですけど……」
「ねえねえ、合コンに参加する事があったら僕も呼んでよ。」
「えっ。普通、数合わせなら、女子しか声かけないと思うんですけど。」
「なるほど。わかった。女子側で参加する。」
「なんで!!」
「あっ、じ、時間大丈夫です?」
「んー、そうだね。また会えるものね。
約束だよ。また、絶対会おう。」
すっと出された指に釘付けになった。指きりだ。
距離感の掴み辛い彼だと思ったが、私に対して少なからず好意的なのを感じてふと笑みがこぼれた。
緊張していたらしく、縮こまっていた顔の筋肉が解放されたのが分かった。
「もちろん。」
その場のノリ的なやつで、何の抵抗もなく小指を絡ませた。
木場君の小指は、思った以上に冷たくてビックリした。
「……。木場君って、冷え性なんですか?」
「あ、そうかも。末端冷え性。ごめん、冷たかったかな。」
「あ、いえ……。」
「あとね、緊張していたからかも。」
「緊張?」
「そりゃね。ふふ、よろしくね、カナさん。」
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木場:会ったよ。
文太:@木場 知ってるし。ねえ、報告の意味分かってる?
セイ:@木場 どうだった?ヽ(・∀・)ノちゃんと話せた?
木場:合コン参加する事があったら呼んでもらう事になったよ。
文太:@木場 はあ?!なんで!!アンタ男なんだから数合わせに呼べないだろ!
文太:馬鹿じゃないの
岡目:えっ木場女装すんの?
セイ:@木場 合コン行って、どうすんの?(´ε`;)
木場:@セイ 経験値あげてくる。