水没少女


「もう熱は下がったみたいですね、もう大丈夫ですよ」


私が手渡した体温計を眺めながら優しく先生は言いました。私は、ようやく退屈で仕方なかったベッドを抜け出せるかと思うと、とても嬉しくなりました。




「先生、もう御外に出たらダメ?」

「まだ駄目ですよ。もう少し休みなさい」



そう言って、落ち込む私の寝癖のついた髪に触れる手がくすぐったくて思わず笑みが零れてしまうのです。



「ですが、ずっとベッドの中では退屈でしょう?何か持ってきましょうか?」


ふとした先生の提案に私は目を輝かせました。先生は私の事が手に取るように分かるのでしょうか、いいえ、先生いわく私の気持ちは顔に表れ易いそうなのです。





「先生、絵本読んでっ!」



私がにっこり笑ってしまうのは先生は絶対に断らない事を知っているからで、ほら先生は私の座るベッドに腰掛け、優しく笑い返してくれます。真っ白で私には不釣合いなくらい大きいベッドの横の棚には私の好きな絵本が沢山入っているのです。




「どれが良いですかねぇ」



品定めをするように一差し指を宙に漂わせながら絵本をなぞっていく先生に私は迷わずお願いをしました。










「“人魚姫”!!」



「“人魚姫”、ですか?」


目を丸くして少し驚く先生に私は微かに首を傾げました。





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