水没少女

いつだか眠れない夜に、どうして先生は先生になったのかを聞いた事がありました。好奇心の塊のような私は次々と先生を質問ぜめにしてしまうのですが、先生は嫌な顔一つせず話してくれました。


先生は丁寧に話して下さいました。人の命を救う為に先生をしているのではなく、もっと格好悪く下らない理由で先生をしていること。




「僕が小学生の時にね大きな事故に巻き込まれて大きな怪我をしたんですよ。学校の友達から届く手紙や見舞いは僕の励ましになりはしなくて、むしろ元気な彼等が妬ましかった。…どうして自分だけこんな辛い思いをしなきゃいけないんだ、って思って僕は願った……―」




私は静かに目を閉じてブルーな水底へと沈んでいきます。他の人ならあまりの息苦しさに手足をばたつかせるのでしょうが私は呼吸も忘れ、ただただ冷たくて心地よい暗い水底に沈んでゆくのです。





























「世界中の人間が苦しめばいい」




一番暗くて冷たい水底で私の愛しい人は新鮮な酸素を求めて、もがき続けているのですから。



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