桜の花びら、舞い降りた
あの神社のこと。
灯篭に掘った名前のこと。
あそこで突然溢れてきた圭吾さんへの想い。
私が美由紀さんの生まれ変わりかもしれないなんて。
「圭吾くん、なにか思い当たることは言ってなかったか」
「なにかって……なにを?」
「過去に戻れる条件っていうか、橋から飛び降りたときになにか変わったこと」
「どうなんだろう。なにも聞いてないけど……」
圭吾さんがなにかを思い出すとき。
それが私たちの別れのとき。
それなら、なにも思い出さなければいいのに。
一瞬でもそう思う自分がいやになる。
ついさっき香織のところで『圭吾さんの望みが私の望み』なんて格好つけて言っておきながら。
圭吾さんの腕の温もりがまだ残る自分の体をぎゅっと抱きしめた。