桜の花びら、舞い降りた
「どこって……隣のおばさんが……」
するとお母さんは、『あぁ』と思い当たることがあるような顔をした。
「亜子、ご飯は食べたの?」
首を横に振る。
今日は俊さんの家で紅茶をよばれただけ。
カップラーメンを食べずして送り届けられてしまった。
「ハヤシライスがあるからいらっしゃい」
……ハヤシライスか。
お父さんの好きなメニューだ。
私の返事を待たずにお母さんはキッチンへと向かった。
すでに先に食べ終わったらしく、テーブルにはお母さんの湯飲み茶わんがあるだけだった。
お皿に盛ったハヤシライスを私の前に置くと、お母さんは向かいに腰を下ろした。
「お隣の田村さんがなんて?」
「……お母さんにいい人を紹介しようとしたら、お父さんのことがまだ好きだからって断られたって」
「田村さんったら……。そのまま亜子に言わなくてもいいのに」
お母さんが照れ隠しに笑う。