桜の花びら、舞い降りた

本当は分かってる。
ここから飛び降りて圭吾さんのところに行けるわけがない。


「圭吾くんと約束したんだろ? 四月十六日に会うって。圭吾くんはちゃんと生きるって約束したのに、亜子はそれを破るのか」

「圭吾さんとの約束?」

「そうだよ」

『四月十六日、亜子ちゃんの誕生日にあの神社で会おう』


圭吾さんは、確かにそう言った。


「圭吾くんを待ちぼうけにさせる気なのか?」


……そうだよ。
私、なにやってるんだろう。


「俊さん、ごめん」

「俺に謝っても仕方ないだろ」


俊さんは、「ほら」と手を伸ばして私を立ち上がらせた。


「ったく、このごろ顔を見せないと思ったら、ろくでもねぇこと考えてるんだから」

「……ごめん」

「もういいよ。ほら、行くぞ」


俊さんは、私の背中を押して歩き出した。


「紅茶、飲むだろ?」


小さくうなずくことで返事をした。

< 186 / 207 >

この作品をシェア

pagetop