あの日、キミが流した涙の先へ



春野先生から話し出す前に、わたしは頭を下げた。



「昨日は試合終わった後、会場を抜け出してすみませんでした」



そして、ポケットから封筒を取り出して先生に手渡した。



「これは何だ?会場から抜け出して反省文でも書いてきたのか?」



わたしはその質問には何も答えなかった。



フッと笑いながら、封筒から紙を取り出して三つ折りにされた紙を開くと……先生の表情はなくなった。



「わたし……バスケ辞めます」



談笑しながらお昼を取っていた他の体育の先生たちが話すのをやめてこの部屋の中がしんとした。



わたしの方を向きながら「本当なのか?」と目をぱちぱちとさせて、じっと見つめてくる。



春野先生はわたしの書いた退部届を持つ手が震えていて、ダンッと机を思いきり叩くと椅子から立ち上がった。



「お前は……お前はこんな引退目前にしてこのチームを捨てるのか!



キャプテンがこのチームから抜けたらどうなるか分かっててこの選択をしたのか!」





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