あの日、キミが流した涙の先へ
土手に着くと、小さな期待をして行ったものの彼の姿は辺りを見回しても見つからなかった。
「いるわけ……ないか」
舞い上がっていた気持ちが一気に下がった。
なんだか心を弾ませながら来た自分がばかみたいでイヤホンを外してミュージックプレイヤーをかばんにしまった。
ため息を小さく吐いてから、今朝と同じように草の上に座る。
そして、目を瞑って周りの音を聞いてみた。
いつもは体育館のバスケットシューズが床を擦るキュッキュッと鳴る複数の音、ダムッダムッと床に打ち付けるボールの音、それから絶え間ない部員たちの声しかなかったけど……今はそんな音はひとつしない。
カサカサと草と草が風が吹いてぶつかりあったり、さらさらと流れる川の音。
誰かがわたしの後ろを通過する足音。
どこからか聞こえてくる子供たちの声。
そんな心地のよい音に誘われてそのまま眠ってしまいそうになった。