あの日、キミが流した涙の先へ
「なんで…わたしのこと」
彼の方を見ながら、膝の上に置いていたかばんを胸元にぎゅっと押し付けた。
思ったんだ……この瞬間。
この人にもわたしがバスケを辞めることを知られてはいけないって。
わたしが言わなくても、この人から通してみんなに知られてしまうかもしれない。
「なんでって、うちのクラスにも女バスの子いるし。
その子たちからキャプテンの子はすっごい上手いって聞いてたからさ」
「上手くないよ、わたしなんて全然。昨日は試合にも負けたし……」
なるほど、女バスは部員が多いから一クラスに数人ずついるしね。
それならもう関わらない方がいいのかもしれない。
部活だって病院行くって言って嘘をついてわたしはここにいる。
椎原くんのそばにいたらいけない気がした。