あの日、キミが流した涙の先へ
最後にわたしはもう一度ボールペンを持ち直した。
今までは自分のバスケへの気持ちを書いてきたけど、ここからはわたしが退部したら同じ3年生たちを試合に出さないと言われてしまったことに対してのお願いをした。
本当にどこまでもわがままではあるけれど、わたしが退部を選んだことと他の3年生たちは関係のないことだから
今まで優勝するために頑張ってきた3年生たちの努力を無駄にしないでほしい。
彼女たちの将来をわたしのせいで壊さないでほしい。
こんな最後の最後で辞めると決めたわたしを『逃げた』『裏切った』『捨てた』とどんなに恨んでもいいから……。
“お願いします!どうか、どうか他の3年生たちをスターティングメンバーとして選んで試合に出してください”
そこまで書き切ると3年間お世話になりましたと添えるとともに右下に“望田未希”と名前を書いた。
ボールペンを机の上に置くと、自分の気が済むまで読み返した。
口で言葉にできなかった言葉がきちんと自分の手で言葉にできているか、何度も何度も。
そしてかばんからこの間受け取ってもらえなかった退部届と一緒に封筒の中に入れた。