あの日、キミが流した涙の先へ
パッと顔を開けると、放送のスピーカーの隣にある時計は5時半を指している。
今ならきっと体育教官室に行っても、体育の先生たちは部活に行っていて誰もいないはず。
もちろん春野先生だって、女バスの部活に出ている。
今しかない。
わたしは荷物をすべてまとめてかばんの中にしまうと、封筒だけ持って体育教官室を目指した。
体育館に近づいて行くたびにいろいろな部活から声が聞こえてくる。
そんな中でも一番耳に入ってくるのは女バスの声。
カウントをしたり、誰かの名前が聞こえてきたり、シュートが入ると「ナイッショ!」という声が聞こえてくる。
心臓の鼓動が急に速くなっていく。
誰も体育教官室の中にいないか、たまたま教官室の中に誰かが入ってこないかそんな心配がどんどん自分を追い詰めてくる。
ドアの前までたどり着くと、少しでも自分を落ち着かせるために息を吐いた。
「大丈夫、大丈夫……」