あの日、キミが流した涙の先へ



ドアを2回たたいてノックをすると、ドアをそっと開けた。



「失礼します。女子バスケットボール部の望田……あっ」



いつものように挨拶をしていると、思っていたとおり先生たちは誰もいなくて部屋の中は電気はついているけどがらんとしていた。



……良かった。



早く春野先生の机に置いてここを出よう。



わたしはドアを閉めて、一歩一歩春野先生の机に足を向ける。



体育館に続くもう1つのドアからはダムッダムッというボールの音がいっぱい聞こえてくる。



今日は教官室側で練習しているんだ。



わたしは前まで来ると、綺麗に整頓された春野先生の机上に退部届と手紙の書いた封筒を載せた。



そして春野先生はここにはいないけれど、その場で頭を下げた。



今まで本当にお世話になりました。



先生はわたしのことをキャプテンとして指名して下さったのにも関わらず、最後まで全うすることができずに本当に申し訳ありませんでした。



ここまでわたしにバスケを教えてくださりありがとうございました。



わたしが去ってもどうか、他の3年生たちにだけは試合に出る機会を与えてあげてください。



直接話に来ることができなくて申し訳……



体育館の方から誰かの足音が聞こえてきた。



すぐに誰か先生か生徒が来る。



もう時間切れだ。わたしは急いで頭を上げて外に繋がる教官室のドアを逃げるように開けて飛び出した。



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