あの日、キミが流した涙の先へ
わたしは鈍い音を立てて床に倒れ込んだ。
お母さんの目はもう今にも涙が出そうだったけれど、とても怖い目だった。
「なんで……なんでこの部屋にはバスケのもの一つもないのよ!どこにやったのよ!」
そう言って、部屋にあるクローゼットや押し入れの中を探し出す。
お母さんは押し入れにわたしが数日前にしまったものを出すと、それをわたしに向かって投げつけてきた。
エナメルバッグやユニフォーム、練習着、バスケットボール、部活ノート、色紙もすべて……。
「……っ、いい加減にしなさいよ!
あなたのバスケのためにどれだけお金と時間を使ってきたと思ってるのよ!
未希にとってのバスケはそんな簡単に捨てられるものだったの!」
「わたしはもうバスケが嫌いなの。もうやりたくない!
だからわたしを自由にして。
もうお父さんとお母さんの言いなりになってバスケもしたくない!」
無意識にわたしはそう口走っていた。
お父さんはわたしを助けようともせずただただ冷淡な表情で見ていた。
その表情を見て、わたしはお父さんにひどく幻滅されたんだと分かった。