あの日、キミが流した涙の先へ



「……だめだよ、そんなこと言っちゃ。前にここで会った時も言ったでしょ。



“泣くくらい自分のことを追い詰めないで4番さんはもっと笑った方がいいよ”って。



もう忘れたの?」



彼は宥めるような声で言っていたのに、わたしを上から下まで見ると「それにしても本当にびしょ濡れだねー!」なんて暢気な声に変わった。




あっ……そういえばそんなこと、一緒にチョコチップメロンパンを食べていた時に椎原くんが言ってた気がする。



それが心に響いてなかったわけじゃないけれど、最近の毎日が怒涛すぎてすっかり頭から消えていた。



「……忘れて…ない」



「嘘だね。嘘ついたから代わりに傘持って」



彼はわたしの手首をそっと離して、傘を差し出してきた。



嘘じゃなかったら何か言い返そうと思ったけど、嘘を吐いたのは事実だから椎原くんから黙って傘を受け取った。



「逃げないでね」



「分かってる」



フイっと椎原くんと違う方向を向くと、クスクス笑う声が聞こえてくる。



そして後ろからわさっと両肩に何かが載って。



今まで全身ずぶ濡れで寒いくらいだったのに、それが一気にあったかくなった。



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