あの日、キミが流した涙の先へ
一瞬、ほんの一瞬だけわたしは椎原くんに抱き締められたのかと思った。
だけど、それは違った。
なぜなら、あったかいままなのに椎原くんが「もういいよ」と言ってわたしから傘を奪ったから。
彼はYシャツ姿になって、わたしにブレザーを貸してくれた。
そしてわたしのブレザーの上には椎原くんのブレザーが載っている。
「よし、じゃあ風邪引く前に帰るよ。家どっち?」
「いい、1人で帰「さないよ。そうしないと家に帰ったか分からないじゃん」」
最後まで言わせてもらえなかった。
しかも「行くよ」と言われて完璧彼のペースだ。
なんだかこんな風に流されてしまったのが気に食わないけど、わたしは椎原くんの隣を歩くのをやめなかった。
強引なんだけど、口調が強引じゃないから強く言えない。
椎原くんってやっぱ変なひと。