あの日、キミが流した涙の先へ
「そしたら、わたしの話聞いてもらってもいい?」
こんな何もかもから逃げてるわたし。
もしかしたら椎原くんは根性ないなとか、子どもだなって思うかもしれない。
それでもたった今、なんの気まぐれだか分からないけど彼に聞いてほしくなった。
ネガティブに彼がとるかもしれないと思う一方で、受け止めてもらえるかもしれないと思う変な自信があったから。
「いいよ、聞く。その後僕も話す」
一瞬わたしの方に目を向けたのに、すぐに彼は前を向いた。
僕も話すと口にしたのになんだかその表情からは今にも揺らいでしまいそうで…。
彼が話したくないというならそれでもいいと思ったわたしはまずは自分の話をしようと決めて深く目を閉じた。
風の音。鉄橋を超える電車の音を遠くに聞きながら、あの時のことを思い出した。