きみのおと
「てか、二人すごい上達早いじゃん!」
「これくらい普通だろ。お前らがとろいんだよ」
「はぁ!?むっか―!千秋くん。この二人になんか負けられないよ!練習再開!」
ムキになったしぃちゃんが立ち上がり僕に手を差し伸べる。
少しだけ恥かしいけど、僕もその手に手を重ねた。
「昼休み終わる前に上達すればいいな」
「見てなさいよ!今にあんたより早くなってやるんだから!」
しぃちゃんは、負けず嫌い。
人と仲良くなるのがうまい。
皆から怖がられている芹川くんとも、あっという間に仲よくなった。
しぃちゃんは優しい。
だから、僕にもこんなに優しくしてくれる。
僕はそれに甘えてる。
「じゃあ、行くよ。せぇの!」
繋がった右足が。
近づいた物理的な距離が。
胸を高鳴らせて。
僕に勘違いを植え付けていく。
もっと、近づきたい。
もっと、側にいたい。
しぃちゃんを、もっと知りたい。
欲深くなっていく。
なにも求めたないと決めていたのに。