きみのおと


「おぉ、モテてんじゃねぇか。無口やろう」




茶化すような声で現れたのは芹川くん。
ちゃんと準備残ってたんだ。

しぃちゃんと出会って変わったのは、きっと僕だけじゃなくて、芹川くんもだ。
最初みたいにあからさまな嫌悪感も出すことなく、口は悪いけど、しぃちゃんたちといることも嫌がっているようには見えないし。


なんとなく雰囲気が丸くなった気もする。



『なにが?』



ノートに書いて見せると、面倒くさそうにそれを読む。
芹川くんは、今でも僕が喋らないことを良く思っていないんだと思う。
でも、必要以上に責めたりはしない。




「なにがって、あのハチマキ。あれって、なんか伝統なんだろ?」




伝統?
僕は首をかしげる。



「知らねぇのか。好きな奴に応援の言葉を書いてもらうってやつ」



好きな奴・・・?
え?
あの子が僕を?
そんなまさか。

だって、今までこんな風になってから、誰かにそんな風に見られたことなんてなかったし。
あの子だって、話したことなんて一度もなかった。




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