きみのおと
「そんなもんだろ。お前、髪切って雰囲気変ったし。そこそこ顔はいいだろ」
『芹川くんに言われてもあまり嬉しくない』
正直に思った事を書いて見せる。
芹川くんは嫌そうな顔をする。
「あほか。別に俺が思ってることじゃねぇよ。今まで根暗だと思ってたやつが、実はイケメンでしたなんて。女子の格好の餌食だな、お前」
『だから、嬉しくない』
「・・・お前、言い返すようになったな。言い返すっつか書き返す?って、それも変だな」
僕だって、芹川くんとこうやって話せるようになるなんて思ってなかった。
「つか、その筆談。ちょーめんどいんだけど。いい加減喋れよ。別に喋れないわけじゃないんだろ?」
そう言われて僕は俯く。
そんな僕を見て芹川くんは盛大に大きなため息を吐いた。
わかってるんだ。
書くのを待って、それを読むなんて面倒なことくらい。
それが、本当はしゃべることができる僕だから。
でも。
怖い。
こんなに毎日が楽しくなって。
顔をあげられるようになって。
今まで見ることのできなかった景色が。
感じることのなかった感動が。
楽しい日々が、ここにはあって。
それでも。
僕の背中を引っ張るものは。
どうにもその手を放してはくれなくて。