きみのおと


駆け出して教室を出ようと戸をあけたその先に、驚いた顔のしぃちゃんの姿。



「わ、びっくりした。千秋くん、お疲れ」




明るい笑顔のしぃちゃんの安心する雰囲気。
僕は驚きながらもギュッとハチマキを握りしめた。



「疲れたよねー。明日本番だもんね。頑張らなきゃ。絶対勝ちたい!ね・・・」




明るい調子で話しながら教室に入ってくるしぃちゃんの手を掴んで引き止めた。
ああ、どうしよう。

ハチマキに応援の言葉をください。
そう言いたいのに。


ノートにあらかじめ書いておけばよかった。
どうしよう。
手を放したらしぃちゃん行っちゃわないかな。




「千秋くん?」




ドクン、ドクンと心臓が早鐘を鳴らし、頭の中がグルングルンと回る。
ノートを開いてそこに急いで文字を連ねる。




『応援の言葉を、ください』




字が震える。
書いて、くれるかな。


それを見たしぃちゃんは一瞬目を見開いたけど、すぐに笑顔になった。



「もちろん!あ、私のにも書いてよ」



そう言ってポケットの中からハチマキを取り出した。



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