きみのおと
伸ばした手
『ただいまより第○○回 体育祭を開始します』
アナウンスと吹奏楽部の演奏で幕を開けた体育祭。
活気ある声が充満するグラウンドの中に僕はいた。
「始まったね!頑張ろうね、千秋くん!」
コクリと頷いてみれば、にっこりと笑顔が返ってくる。
去年はいかに目立たないようにするか。
そんな事ばかりを考えて、隠れていた僕だったけど。
「かったりー。体育祭とか、なくなればいいんだ」
「芹川くんは、もう少し、協調性というものを身につけたほうがいいよー」
「うっせ、バァカ」
「ほんと、むかつくわね、あんた。なんで私に対してはいつもケンカ腰なのよ!」
文句を言いながらもさぼったりしないのは、芹川くんの中にも何か心境の変化があったんだろうか。
そう思うと、やっぱりしぃちゃんはすごいな、なんて考える。
「もう、二人ともケンカしないの。芹川くん、頑張ろうね。二人三脚」
「おお。やるからには勝つ」
いや、でも。
もしかしたら芹川くんを変えたのはしぃちゃんじゃないのかも。