きみのおと


体育祭は順調に進んでいく。
それぞれのチームが接戦した状態。

夏か近づくこの時期。
太陽は容赦なく照り付け、じわっと汗をにじませる。



大きな歓声の中、ふと思う。
ああ、僕は今一人じゃないのだと。




「千秋くん、私たち集合だって」




手を引かれハッと気づき立ち上がる。
引かれるままに歩き出す。


小さな、暖かな手。


思わずギュッと握り返した。




「・・・っ、千秋くん?」




真っ赤な顔で振り向いたしぃちゃんにハッとして手を放した。
顔を隠すように腕を顔の前に出すと顔を俯かせた。


やっちゃった。
思わず。
ほとんど、無意識に。




「あ、ごめん。いやとかじゃなくて、あの、びっくりして」




しぃちゃんが、慌てたようにフォローの言葉を口にする。
しぃちゃんに気を遣わせてどうする。

バカだ、僕は。




欲張ってちゃだめだ。




< 118 / 418 >

この作品をシェア

pagetop