きみのおと
体育祭は順調に進んでいく。
それぞれのチームが接戦した状態。
夏か近づくこの時期。
太陽は容赦なく照り付け、じわっと汗をにじませる。
大きな歓声の中、ふと思う。
ああ、僕は今一人じゃないのだと。
「千秋くん、私たち集合だって」
手を引かれハッと気づき立ち上がる。
引かれるままに歩き出す。
小さな、暖かな手。
思わずギュッと握り返した。
「・・・っ、千秋くん?」
真っ赤な顔で振り向いたしぃちゃんにハッとして手を放した。
顔を隠すように腕を顔の前に出すと顔を俯かせた。
やっちゃった。
思わず。
ほとんど、無意識に。
「あ、ごめん。いやとかじゃなくて、あの、びっくりして」
しぃちゃんが、慌てたようにフォローの言葉を口にする。
しぃちゃんに気を遣わせてどうする。
バカだ、僕は。
欲張ってちゃだめだ。