きみのおと
「惜しかったねぇ!」
しぃちゃんがケラケラと笑いながらそう言った。
結局、僕たちは2着でゴールだった。
芹川くんたちは1着。
「ま、お前なんかそんなもんだろ」
「はぁ?ほんと、芹川くんって一言余計!」
「うっせ」
しぃちゃんと芹川くんの罵り合いは健在。
仲がいい証だよね。
ツキン。
なんだろう。
胸の痛み。
「久賀くん、頑張ってたね!あんなに頑張ってる久賀くん私初めて見たよ」
榎並さんがそう話しかけてくれる。
認めてもらえたことが素直に嬉しい。
榎並さんは、朗らかでとても優しい人。
明るくて無邪気なしぃちゃんとは違う温かさを持った人。
『すごく、楽しかった。でも、勝ちたかった』
ポケットから取り出したノートにそう書いて見せる。
「勝ちたかったって、そういう気持ちを持てることも進歩だよね」