きみのおと
『しぃちゃんのせいじゃない』
そう書かれたノート。
私はその文字を見た後千秋くんを見る。
千秋くんはばつが悪そうに目を反らすとその続きを書き記していく。
『僕は、しぃちゃんの足手まといにしかならないから』
「足手まとい・・・?なにが?」
『怪我した時、僕は気づいてた。あのポールが倒れそうだって』
千秋くんのいつもきれいな字が震えてる。
それが、千秋くんの心情を表している様で痛かった。
『でも、僕は言えなかった。危ないって。しぃちゃんを助けられなかった』
「え・・・」
『しぃちゃんは、僕のせいで怪我したから。僕が助けられなかったから。しぃちゃんの優しさに甘えてばかりだったって今更気づいたんだ』
あの時・・・。
確かに、近くに千秋くんはいた。
でもあれは、私の不注意で。
あのポールをあんなところに置いた人のせいでもあって。
でも、私はそんな事責めるつもりなんてなくて。
それなのに。
気づかせることができなかったって、そのことで自分を責めてるの?
『僕は喋れないんじゃない。声が出せないんじゃないんだ。本当は喋れるのに・・・。あんな時でさえ、怖くて自分を護った。そんな僕が、このまましぃちゃんの側にいて、しぃちゃんに甘えるなんてできない』