きみのおと
ま、まさかの・・・。
嬉しいけど、心臓がもたないよ。
「お、お邪魔します」
たどたどしくそう言って千秋くんが広げた傘に入った。
触れるか触れないかの瀬戸際。
千秋くんの温もりがすぐ隣にある。
ザーザーとさっきまでは煩く感じていた雨さえも、なんだかBGMみたいで。
「雨、激しいね」
そう声をかけると、千秋くんは頷く。
雨が傘を打つ音が激しくて、私の声が届くか心配。
でも、千秋くんは私を見て頷いてくれた。
それが嬉しい。
「梅雨が明けたら、暑くなるし。それはそれで嫌だけど、海とかお祭りとか、楽しいこともたくさんあるしね」
一方的に話し続ける。
沈黙が余計に心拍数をあげるから、誤魔化すように。
千秋くんからは定期的にうなずきが帰ってくる。
そのことにホッとしながら私は話し続けた。