きみのおと
吐息だったけど、声を出して笑った千秋くんなんて初めて。
それが感激で思わず私も嬉しくなってしまいかけてハッとした。
「わ、笑ったなぁ!私、こんなに必死なのに!」
その姿を見て笑うなんて!
もぉー!
怒った顔を見せて千秋くんの身体をコツッと叩く。
千秋くんは笑いながら手を合わせて謝る仕草を見せた。
「千秋くんの笑顔に免じて許してあげる」
だめだな。
千秋くんのこの顔を見たら、きっと何でも許してしまう。
例え理不尽なことを言われても、許してしまいそうで怖い。
「でも、本当にごめんね。あの、よかったら家であったまっていったらどうかな?」
『大丈夫。家に帰るだけだし。しぃちゃんは濡れてない?』
「私は大丈夫。千秋くんが庇ってくれたから」
取り出したノートに書かれた言葉に返すと、千秋くんはホッとしたように笑った。
『なら良かった。僕は平気だから帰ろう』
少し心配だったけど、千秋くんにそう言われ私たちは歩き出した。