きみのおと


「頼まれてくれるか?」

「もちろんです!心配だし、様子を知りたかったのでちょうどいいです」

「そうか。ありがとう。助かるよ。でも、お前が友だちになってくれて俺もホッとしたよ」

「え・・・?」

「去年は担任じゃなかったけど、教科担当でさ。いつ行っても、教室の隅でポツンと所在なさげに俯いて座ってたからな」




先生も、心配してたんだ。
そのことが知れてよかった。



「でも、最近は喋らないにしても、顔は上がってるし、表情もすごく明るくなったように思う。人との出会いでこんなにも変わるもんだなって、そう言う可能性が知れてよかった」

「先生・・・。先生って、本当はすごくいい先生だったんですね」

「本当はって・・・どういう意味だよ。失礼だな」




周りの生徒と同じように、先生たちも千秋くんの事に触れないように、気にもしていないように見えたから。
授業の邪魔にならなければ、どうでもいいのかと思ってた。



「久賀くんは、すごくあったかくて、優しくて、純粋で綺麗な心を持った人ですよ」

「ああ」

「私は、これからもそんな久賀くんの友だちでいたいって思ってます」




本当はもっと先に、違う関係を望むけれど。
高望みはしない。


側にいられる立ち位置を、間違えたくない。




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