きみのおと


「あの子、・・・私に心配をかけまいとしてるのだと思うんだけど、学校の事を聞いても・・・大丈夫とか、そういうことしか言ってくれなくて・・・」

「そうなんですか・・・」

「でも、最近はなんだか雰囲気が変わったというか、明るくなったのがわかって・・・。なにか楽しいことがあったのかなって・・・少し期待はしていたんだけど、わからなくて不安もあって・・・」



千秋くんが何かを抱えていることはわかってた。
そのことがきっと喋れないことにも繋がっていて。
でも、それはきっと、そんな千秋くんを側でずっと見守ってきていた家族だって同じ想いを抱えていたんだろう。


“何が”なんてわからない。
それを知りたいとも思わない。

それでも。


今は、きっと、違うと。



「あなたが来た時も、もしかしたらって期待と・・・でもまたって・・・不安があって。酷い態度をとってしまったわね・・・。本当に、ごめんなさい・・・」

「いえ。その。えと、安心してください!」

「え・・・?」

「少なくとも今は、千秋くんの側には私がいます。私以外にも、千秋くんを想う人は少なくとも二人はいますから!」




それが、どれだけ安心できる材料になるかはわからないけれど。


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