きみのおと


「心を開ける誰かに出会えた千秋くんなら、きっと大丈夫ですよ」

「・・・っ、ありがとうございます」

「でも、もし、この先なにか壁にぶつかったり、不安に思うこと悩むことがあったらいつでも僕を頼ってくれ。大人である僕だから言えることもできることもきっとあるだろうから」




先生は僕に向けそう言い切った。
こみあげてくるものを誤魔化すように唇をかみしめ深く頷く。



僕は、知らないうちにいろんな人に助けられていたんだ。
辛くて、悲しくて、苦しくて、惨めで。
誰も、僕の事なんて考えてくれないって思ってた。


でも、それでも、僕をちゃんと見て、思ってくれる大人も、僕を友だちだと言いきってくれる仲間も。



僕にはちゃんといたんだ。
ちゃんと、できたんだ。




「すみません、少し熱くなってしまって・・・」

「いえ、ありがとうございます。先生が担任で、よかったです」

「ありがとうございます。・・・じゃあ、進路の事だが、とりあえず進学ってことでいいのかな?」




照れたように頭を掻くと、先生は切り替えるように話を変えた。
僕は、こぼれそうになった涙を気付かれないように拭うと頷く。



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