きみのおと



そっか。
僕もパンが好きで、芹川くんもパンが好きで。
だから一緒にいられるんだ。

芹川くんの他の友だちは、そこまでのパン好きはいなくて、一緒に行ってくれる人がいないから。
だから、僕が抜擢されたんだ。



そっか。
そっか。



嬉しい。
パンが好きでよかった。
そのおかげで僕は、芹川くんと仲よくなれて、こうして一緒にパン屋に行くことができて。



でも。
もしも、他にパン好きの人が出来たら・・・。
芹川くんは僕なんかより、他の友だちを優先するのかな。


ううん。きっとそうだ。
だって、コミュニケーションの取りにくい僕なんかより、ずっと、話が途切れなくて同じように話せて楽しい方がずっといいに決まってる。



ただ僕が、唯一のパン好きだっただけ。
だから、芹川くんは仕方なく・・・。





「お前、何考えてる?」




いつの間にか思考がどんどん暗闇に落ちていきそうになっている時、芹川くんの怪訝な声にハッとした。
僕が顔をあげ芹川くんを見ると、眉間にしわを寄せムッとしたような芹川くんの顔。


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