きみのおと


「もう・・・、一緒に食べようっていったのに。どうして逃げるの」



ムスッとしながら久賀くんの側に行って、許可もとらずに隣に座る。
久賀くんは購買で買ったであろうパンを手に持っていた。


購買によってここに来たんだ。



「・・・」

「耳が聞こえないわけじゃないんだよね?」




恐る恐るそう尋ねる。
久賀くんは、ギュッとパンを握りしめ、パンはギュッとつぶれた。

そして、小さくコクリ、と首を縦に振った。



「そっか。じゃあ、私が勝手にしゃべってるね。お弁当、ここで私も食べるから」




反応が返ってきたことにホッとして私はお弁当を広げる。
強引過ぎたかな、と思いつつも逃げる様子のない久賀くんに少し安心した。

最悪逃げられるかもと思ってたから。



「いつも、ここで食べてるの?」



そう尋ねると、フルフルと首を横に振った。
やっぱ、今日は私から逃げようと思ったのね。

そこまで嫌がられると、やっぱショックだ。



< 19 / 418 >

この作品をシェア

pagetop