きみのおと
「もう・・・、一緒に食べようっていったのに。どうして逃げるの」
ムスッとしながら久賀くんの側に行って、許可もとらずに隣に座る。
久賀くんは購買で買ったであろうパンを手に持っていた。
購買によってここに来たんだ。
「・・・」
「耳が聞こえないわけじゃないんだよね?」
恐る恐るそう尋ねる。
久賀くんは、ギュッとパンを握りしめ、パンはギュッとつぶれた。
そして、小さくコクリ、と首を縦に振った。
「そっか。じゃあ、私が勝手にしゃべってるね。お弁当、ここで私も食べるから」
反応が返ってきたことにホッとして私はお弁当を広げる。
強引過ぎたかな、と思いつつも逃げる様子のない久賀くんに少し安心した。
最悪逃げられるかもと思ってたから。
「いつも、ここで食べてるの?」
そう尋ねると、フルフルと首を横に振った。
やっぱ、今日は私から逃げようと思ったのね。
そこまで嫌がられると、やっぱショックだ。