きみのおと
顔も、名前も変えられないのならせめて・・・。
そうして喋るのをやめた。
でも、そうしているうちと、本当に声が出せなくなってた。
だそうとすると、あいつらの声が聞こえてきて僕を笑うんだ。
だから、喋ろうとすることすらやめてしまった。
目を閉ざし、声を隠し。
なにも見なければ、いい。
なにも訴えなければ、いい。
そうすれば、なにに絶望することもないのだから。
『誰の目に留まらないようにって、ずっと身を顰めて生きるって決めてた』
長い昔話を書いている時間も静かに待ってくれていた芹川くんは黙って僕が書いたそれを読んでいた。
僕が逃げた話。
どんな反応が返ってくるんだろう。
きっと強くてかっこいい芹川くんには理解できない話だろう。
「・・・で?」
しばらくすると、ノートを返しながら芹川くんが言った。
で?って・・・。
「お前の中学の仲間が、クズだってことはわかった。・・・だから、なんだ?」
怪訝な顔をして芹川くんは深く椅子に座る。