きみのおと
「じゃあ、さっそく始めよっか。前みたいに、私と芹川くん、しぃちゃんと久賀くんでいいかな?」
「亜衣がそれでいいなら、私は文句なんてないよ」
「うん。じゃあ、芹川くん始めよっか」
「おう」
芹川くんと榎並さんはすぐに勉強態勢に入る。
相容れなさそうな二人だと最初は思ってたけど、意外とお似合いな二人だと今は思う。
「じゃあ、千秋くん、お願いします」
深々と頭を下げるしぃちゃんに僕は頷いた。
しぃちゃんと僕は、どんなふうに見えるんだろう。
しぃちゃんと近づきたい。
もっと知りたい。
もっと、もっと、っていつの間にか欲深くなっていく気がする。
友だちになれただけで十分幸せな事なのに。
もっと別の関係になりたいなんて。
おこがましくて、バカみたいだ。
『よろしくね、しぃちゃん』
何度もこうして文字で呼んだ。
でも、本当はちゃんと自分の声で呼びたい。
僕の声で振り向いてほしい。
僕を、見てなんて子どもみたいだ。