きみのおと
「ま、雫は、お前で充分だろ」
「ちょっと!なんでよ!」
「そんくらいでちょうどいいんだって」
「ひどい!ちょっと、いっつも思うけど柊二くんって私へのあたり強くない!?」
また始まった二人のやり取り。
亜衣ちゃんは二人のやり取りをじっと見つめてた。
どこか、複雑そうな瞳で。
二人が仲いいのはいいことだって思う。
皆で仲良くいたいって思ってる。
でも。
なんだろうこのモヤモヤは。
しぃちゃんが柊二くんにつっかかっていく度。
柊二くんがしぃちゃんをからかう度。
柊二くんが“雫”って呼び捨てにするのを聞くと。
胸が、ツキツキ痛むんだ。
「柊二くん、そんなんだからモテないんだ」
「おい、モテないってなんで決めた。お前なにを知ってんだよ」
「わかるわよ。女の子の気持ちは」
「自分を女代表みたいに言ってんなよ。勘違い」
「むー」
ねぇ。
しぃちゃん。
こっち見て。
僕を、見て。
“千秋くん”って呼んでほしい。
もっと、僕と。
ねぇ。