きみのおと


「ま、雫は、お前で充分だろ」

「ちょっと!なんでよ!」

「そんくらいでちょうどいいんだって」

「ひどい!ちょっと、いっつも思うけど柊二くんって私へのあたり強くない!?」



また始まった二人のやり取り。
亜衣ちゃんは二人のやり取りをじっと見つめてた。
どこか、複雑そうな瞳で。


二人が仲いいのはいいことだって思う。
皆で仲良くいたいって思ってる。


でも。
なんだろうこのモヤモヤは。


しぃちゃんが柊二くんにつっかかっていく度。
柊二くんがしぃちゃんをからかう度。



柊二くんが“雫”って呼び捨てにするのを聞くと。



胸が、ツキツキ痛むんだ。




「柊二くん、そんなんだからモテないんだ」

「おい、モテないってなんで決めた。お前なにを知ってんだよ」

「わかるわよ。女の子の気持ちは」

「自分を女代表みたいに言ってんなよ。勘違い」

「むー」





ねぇ。
しぃちゃん。


こっち見て。
僕を、見て。



“千秋くん”って呼んでほしい。
もっと、僕と。




ねぇ。




< 210 / 418 >

この作品をシェア

pagetop