きみのおと
「なんか、想像通りの声だな」
「なにそれ」
「別に、悪い意味じゃねぇよ。声の事でもいじめられてたっつってたからな。どうせ、憎たらしいほどいい声なんだろうと思ってたんだって」
ぎろっと睨みつけるようなしぃちゃんに慌てて言い直すようにそう訂正する。
憎たらしいほどいい声?
僕の声が?
そんなわけない。
「お前、性格はウジウジして暗いやつだけど、顔は中性的で綺麗な顔してんだろ。その上、その声で。どうせ妬みとかそういうのがきっかけだったんじゃねぇの?」
「あ、言えてる!千秋くん、髪切って顔がはっきり見えるとすごく綺麗な顔してるってわかったし。女の子たちも、それで見る目変ってたしね!」
「好きな女子の気持ちがお前に向いてんのが気にいらないとか、どうせくだらない理由だったんだろ。知らねぇけど」
「千秋くんの事知れば知るほど、そうだったんじゃないかって納得するかも」
「・・・自分じゃ、わかんないよ」
だってずっと否定されてきたから。
だめなんだって思ってたし。
だから、自分の声も名前も顔も、大嫌いだった。