きみのおと


「あ、久賀くん!バイバイ!」




放課後、鞄を持って帰ろうとしている千秋くんにクラスメイトの女の子たちが照れくさそうに声をかける。




「う、うん・・・。さよなら・・・」

「ねぇ、久賀くんって家どこらへんなの?もしさ・・・」


千秋くんは顔を赤く染め俯きながらそう答えた。
少し困ったような、縋るような顔で私を見る。



「千秋くん、帰ろう!」




すかさず私は声をかけた。
話すようになったからといって、人とのやり取りはまだ苦手な千秋くん。
私が空気を無視して声をかけに行くと、女の子たちはムッとしたように睨みつけてきた。




「・・・いこ」



それを無視して千秋くんに笑いかけると、千秋くんは頷いて女の子たちに一度頭を下げると歩き出した。





「ごめんね、しぃちゃん」

「ん?なにが?」

「・・・ううん」

「私が千秋くんと一緒に帰りたかったの」




本当はね。
千秋くんを助けようと思っての行動じゃない。
少しはその気持ちはあったけど。



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